| 温暖化防止 |
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| 自然の恵みを生かす住宅 |
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2002年2月1日の「省エネルギー政令」発効以降、新築住宅はすべて低エネルギーハウスとすることが義務づけられました。ドイツでは環境にやさしい住宅のエネルギー消費基準を五段階――低エネルギーハウス・パッシブハウス・ゼロ暖房エネルギーハウス・ゼロエネルギーハウス・プラスエネルギーハウス――に分類しています。 一世帯用独立住宅・低エネルギーハウスの場合、エネルギー消費は年間1m²あたり約90kwhです。一方、暖房設備が不要となるパッシブハウスでは基本的に窓は開けずに、換気装置を常時作動させています。この換気装置によって室内に入る空気は地中の熱交換器によって暖められ、また室内から出て行く空気の熱エネルギーの80%が回収されます。ゼロ暖房エネルギーハウスの場合、気温が平均的な年では、非常に寒い日でも暖房がまったく必要ありません。太陽エネルギーのパッシブな利用と住宅内にあるわずかの熱(照明器具や電気器具、人の体が発する熱)で十分足りるからです。またゼロエネルギーハウスでは、太陽光発電システムか燃料電池で自家発電するため、外からの電力供給なしで暮らすことができます。さらに、ソーラーパネルを備え、エネルギー効率が高いプラスエネルギーハウスになりますと、建築コストは省エネ住宅のなかで最も高くなる反面、採算性は最も良くなります。消費する以上の電力を発電することができるので、余剰電力を電力会社に売ることができるからです。
2005年にべルリンからデッサウへ移転することになっている連邦環境庁の新庁舎は、持続可能性を重視した建物です。デッサウの旧"ガス工場地区"跡地に長く伸びたループ状の新庁舎は模範的なエコロジー建築です。 木材をファサードに使った建物は省エネと同時に、居心地の良さも配慮した折衷案と言われてますが、大変な"省エネ優等生"です。高効率遮熱・断熱工法、地中熱交換器、照明の省電力化・インテリジェント制御など省エネ技術がふんだんに利用されているほか、太陽熱コレクターと総面積480m²のソーラーパネル(年間予測発電量18MWh)が設置されます。また、熱交換換気システムによって、排出される室内の空気の余熱を74%回収できます。
この環境庁が"優等生"だとするなら、さらに"野心的"な省エネ建築は、公益法人「ソフトウェアAG財団」がウルムに新築した本部ビル「エネルゴン」です。パッシブソーラーハウス原理を採用するオフィスビルとして世界最大の規模を誇るエネルゴンは、暖房システムを必要としない建物です。それでいて、有効床面積1m²当たり建設単価は1,400ユーロ(18万円)と、従来型オフィスビル並みです。年間維持費は3万ユーロ(390万円)も節減され、CO2の年間排出量も175トン削減され、環境保護にも貢献しています。 エネルゴンでは、室内の温度調節に年間を通じてほぼ10度の地中の熱(または冷気)を利用しています。建物の地下には、樹脂パイプをコンクリートで保護した40本の地熱ゾンデ(地中熱交換杭)が100mの深さまで埋め込まれており、熱交換パイプの中を循環する液体が熱を発散したり吸収したりして、夏は室内の空気が冷やされ、冬は暖められるという仕組みになっています。
今日では、エネルゴンのようなパッシブソーラーハウスが法的な基準を満たしていることを審査する機関もあり、希望すれば認定を行なっています。1996年にヴォルフガング・ファイスト博士が設立した、ダルムシュタットのパッシブソーラーハウス研究所がその認定機関になっています。認定を受けた建築は、ドイツ語圏だけですでに約4,000に上ります。
ファイスト博士によれば、こうしたエコロジー建築は個人でも手の届く価格で建てることは可能です。特殊な窓や換気・断熱システムを使うことによるコスト高は、復興金融公庫(KfW)のパッシブソーラーハウス奨励の低利融資プログラムによって概ね埋め合わせることができますし、地方自治体も独自の助成プログラムを用意しているというのが、その理由です。長期的に見た場合、パッシブソーラーハウスはエコロジー/エコノミー双方の観点からも、従来型新築住宅より有利というのが博士の見方です。
フライブルクのシュリーアベルク山の麓には、プラスエネルギーハウスがすでに47戸完成していて、次期工事の計画も進められています。これを設計したのは、何年も前に太陽の動きに合わせて回転する円筒形のソーラーハウス「ヘリオトロープ」でセンセーションを巻き起こし、ソーラー建築のパイオニアとして知られるロルフ・デッシュの建築事務所です。シュリーアベルクのプラスエネルギーハウスは、屋上のソーラーモジュールを使って消費電力を超えた発電ができます。自然建材を使った室内には陽光が溢れ、高効率断熱・アクティブ換気システムを完備しているため、冷暖房用に必要な電力は年間わずかに10−15kwh/m²と、従来型住宅のわずか10分の1になります。
また、ドイツで太陽エネルギーを利用する場合、問題となるのは夏場は過剰なほど日照があるのに、暖房需要の高い冬場に限って日照が極端に少ないことですが、大容量の蓄熱槽を建物の地階などに設置して余剰エネルギーを貯える一方で、地熱ゾンデとヒートポンプを使った地中熱利用システムを併用することによって、その問題は解決することができます。
テュービンゲン近郊の町プリーツハウゼンに完成した住宅・商業施設の複合ビルでは、こうした太陽熱・地中熱併用システムが実際に利用されています。床面積1,300m²のビル全体の暖房・給湯は、主として屋上に設置された総面積35m²の太陽熱コレクターによって賄われます。ただし不足が生じた場合は、地中150mの深さまで垂直に4本埋め込まれている地熱ゾンデの中を循環する水が地上に運ぶ熱を、ヒートポンプを使ってさらに加熱して、暖房・給湯に使用することができます。
これが理想の姿だとするならば、現実の住宅事情はかなりかけ離れていると言わざるをえません。低エネルギーハウスの基準が法律で義務づけられているのは新築・改築の場合だけで、その比率は決して大きくありません。年間の新築・改築戸数がおよそ29万戸なのに対して、既存住宅は3,900万戸、うち2,000万戸が賃貸です。
たしかにゼロ暖房エネルギーハウスやプラスエネルギーハウスは素晴らしく、学ぶところも多くありますが、そうした方向に都市計画の未来があるかというと、残念ながらそうではありません。複雑な技術を利用し、太陽の恵みを最大限利用できるような建て方を要求するこれらの工法は、どのようにも設計ができるような土地の新築住宅にしか適用できないからです。周辺の建物や木立で光が少し遮られるだけでもエネルギー採取が落ちるので、家の建て込んでいる市街地では不可能です。
省エネ住宅や省エネ暖房の普及と、遠隔暖房や熱電併給システム(コージェネレーション)の利用拡大によって、削減できるであろうCO2排出量は膨大なものです。連邦環境庁のモデル計算に従えば、現在、住宅の暖房から排出されている年間約1億9,000万トンのCO2は、これらの措置によって2025年までに半減することが可能です。つまり、ドイツの年間CO2排出量8億3,700万トンの約10分の1を削減できることになります。
その一方で、省エネ住宅をどんどん新築すればいいという考え方自体には異論があります。省エネとはいっても、住宅を新築すればエネルギー消費は増えるからです。それよりも温暖化防止にとって重要なのは、何千万戸もの既存建築をどうするかであり、省エネ住宅の建設を奨励するよりも、既存の建物の遮熱・断熱性を高める措置への助成の方が重要です。
暖房設備がほとんど不要であったり、余剰電力を生み出す住宅はいまでは珍しくありません。大衆的な価格で先進技術を駆使した建物は、地球温暖化防止に貢献します。省エネ住宅の普及は喜ばしいことですが、将来は、膨大な数の既存の建物の遮熱・断熱性を高めることが大きな課題となるでしょう。
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